カンボジア農村ホームステイ体験記~私が出会ったある一人の女の子~




 

こんにちは!法政大学法学部1年の杉木雄斗です。

赤い土煙がまく道の先にトロピアンスノー村はありました。

私たちがそこを訪れたのは二月十四日から十七日までの四日間。目的は現地で初等教育支援のための塾を二日間開きドロップアウトを防ぐために何が有効なのか調査を行うことです。

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初等教育プロジェクトの一日目。カンボジアの子供たちは総じて人懐っこいのですが、その中でも特にやんちゃで私に懐いてくれた子がいました。彼女の名前はサリーといって小学四年生だったため私たちの授業には参加していませんでしたが、休み時間などで私の手が空いているときに追いかけっこをしたり、おんぶをしてやったり本当に体がくたくたになるまで遊びつくしました。さらには私の持参したカンボジア会話帳を使ってクメール語を一生懸命教えてくれました。このときはまだ彼女のことを

「村にいるたくさんの元気な子供の中の一人」としか認識していませんでした。

二日目の授業の中にサリーの姿がありました。どうやら上級生が授業を受けているのを見て下級生の自分も受けてみたいと感じたようです。常に前のめりの姿勢で先生の話を熱心に聴いているサリーの目はとてもイキイキしていて輝いているように思えました。そしてその日の最後に驚くべきことが起きました。下級生であるサリーが上級生のクラスで最優秀成績を収めたのです。彼女のことをただの元気なやんちゃ娘だと思っていた私には大変な驚きで、まるで自分の妹が受賞したかのように非常にうれしく感じたのを覚えています。みんなの前で賞状を受け取って誇らしそうにしている彼女の笑顔が」とても印象的でした。

その翌日、私たちは児童の家庭訪問をすることにしました。

目的は成績優秀な児童、成績不良な児童の家庭環境や親の教育意識を調査することでなにが子供の学力に影響を与えているのかを調べるためです。その訪問家庭の中にはサリーの家もありました。これは私の希望で下級生にも関わらず上級生のクラスで優秀な成績を収めた彼女についてもっとよく知りたいという気持ちがあったからです。これだけ優秀ならばきっと両親も学のある人で子供に対する教育も熱心で、本人も将来は狭い村を出て大学に進学して広い世界の中で生きていくのだろうと考えていました。

しかしそれは私の楽観的希望に 過ぎませんでした。

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訪れた彼女の家は6畳ほどのスペースで5人家族が住まうには非常に狭く、木の葉を編み込んで作った壁は雨風を防ぐには到底頼ることのできないものでした。床は竹を網目状に敷いて、隙間が多くてもろく、気を付けないと床が抜けてしまいそうでした。きっと裕福で勉強もしやすい家庭環境なのだろうと思っていた私は違和感を覚えました。

いよいよ両親にインタビューのときです。まずは両親の職業を尋ねました。その答えを聞いたとき私は衝撃を受けました。彼女の両親の仕事は「ごみ拾い」でした。ドキュメンタリー番組の中でしか見たことがなかったごみ拾いという職業(職業といえるのか分かりませんが)はカンボジアの中では特に貧しくて荒れ果てた村にしか存在しないものだと思っていました。

この明るい村人達ばかりのトロピアンスノー村にも存在しているということが信じられませんでした。そしてそれがあの私と嬉しそうに遊んでいたサリーの家庭であるということが大変な衝撃でした。ごみ拾いはサリーを含めた子供3人を合わせた家族全員で一日平均1.25ドルしか稼ぐことができないそうです。自分がいかにカンボジアの現実を甘く見ていたかということを痛感しました。

彼女の父親は中学一年生まで学校に通っていたため読み書きは出来るものの、母親は一切学校に通ったことがなく読み書きはできないとのことでした。頭では理解していたものの、いざ対面してみると、この目の前にいる40歳の女性が文字を読み書きすることが出来ないということがにわかに信じられない気持ちになりました。

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そしてサリーに気になっていた質問をしました。将来の夢についてです。

成績優秀な彼女の先生や医者という答えを期待していた私は大きく裏切られることになりました。

彼女の答えは「工場で働くこと」でした。私は戸惑いを隠すことができませんでした。なぜ工場で働きたいのかというと「両親がそう言っているから」だそうです。彼女自身、工場で働くということがどのようなことなのかを一切理解していませんでした。果たしてこれが本当に夢だといえるのでしょうか。両親も生活が苦しいから少しでも早く目先のお金を得たいのでしょう。気持ちは非常によく分かりますし、決して工場で働くことが悪いことだとは言いません。しかし、彼女のような将来有望な子供が家庭環境のせいで可能性をいかすことができないということが非常に悔しく感じました。

そして単純に学力を改善しただけでは子供たちの未来を変えることができないということに

自分の『無力さ』と『憤り』を強く覚えました。

このスティの前後で変わったことがあります。それは自分の中の意識です。

正直言って、今までの国際協力は所詮他人事でした。貧困のある世界を変えたいという意識はあったのは確かですが、遠い国で起きているのだという気持ちは少なからずありましたし、偽善と言われてしまえば反論できないというのが正直なところでした。

しかし村に住み農村の実情を目の当たりにして「遠い国の問題」が「目の前にある問題」に変わりました。

私の名前を何度も呼んでくれて、たくさん一緒に遊んで、一緒に手を握って帰ったあの子がその問題の真っただ中にいるのです。決して他人事ではなくなりました。これからもあの村のために、子供たちのために自分のできることを考え、実行していきたいと強く感じました。

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今回の初等教育支援でトロピアンスノー村の子供たちの未来を変えることはできなかったと思います。

しかし、私の未来は大きく変えることができたと自信を持って言えます。

この四日間は私にとって一生忘れることのできない価値のある経験であったといえるでしょう。

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