あっという間の一ヶ月。
わたしは既に、日本にいます。
みんなは今、何をしているのだろう。
この一ヶ月、わたしは日本語教師としてCBBスクールにいました。
といっても、先生のソムナンのやり方が存在していて、
わたしは言われるがままに一回教科書を読むだけ、
そんな授業の時間もありました。
正直、日本語を教えるだけなら彼一人で十分です。
自分は何の為に来たのだろう、いる意味なんてない、
そう思いました。
しかし、住み込みのわんだに言われました。
「ぼくはにほんごをはなしたい。かいわがしたい。」
授業を受けているある生徒にも、会話ができるようになりたいと言われました。
教科書やプリントを使って文法や言葉の意味を理解することは
母国語で学ばなければ分からない。
でも、正しい発音や、日常会話で使う言葉やフレーズは
現地の人しか知り得ないことであり、
現地の人から学ぶからこそ分かることだと思いました。
会話、それこそ私にしかできないことだと気付きました。
本当に本当に単純なことですが、私はそれすら見失って
ただぼーっと、授業を見ていただけの時がありました。
日本人がいるのに日本語を使わない授業、とてももったいない。
気付いた日からは、できるだけたくさん、みんなと日本語で会話をしました。
ただ、会話といっても、
「げんきですか?」
「はい、げんきです。あなたは?」
「わたしもげんきです。」
おわり
がほとんどでした。
高校生ではもう少し話せる子もいましたが、
小さい子になると大半はここまでです。
あとは、はい、いいえを使えるくらい。
様々痛感した瞬間でした。
だから、少しでも面白くて、使えるものを、と思い
褒め言葉や、自分の気持ちを伝えるフレーズを教えました。
褒め言葉は小さい子にヒットしたようで、よく覚えてくれました。
「あなた は みりょくてき な ひと ですね」
使うか?と思ってしまうくらい面白かったけど、
言えたら、お?とはなります…よね?笑
ただ、完全に覚えるようになるには、一ヶ月後にもう一度、とか
何度も何度もやることが必要だと分かった時は
短期の自分を恨みました。
また、どうして日本語なのか、と思ったこともありましたが、
それは私のカンボジア人の友達から学びました。
私には、プノンペン大学日本語学科の友達が数人いて、
在学中の人も、日本への留学経験がある人も、
既に社会人の人もいます。
社会人の数人は、日系企業、もしくは日本語と関係ある仕事に就いていました。
日本で働く仕事の内定を貰っている人もいました。
日本語がツールとして使えるようになれば、ここまで働くことができる。
もし、スクールの子達が日本語を話せて首都へ出たら、
もちろん大学生とは違うかもしれませんが、
彼らを欲しがる会社はあるはずです。
働いて、お金を貰うことができます。
簡単にはいかないことかもしれないけれど、
その大きなチャンスが、スクールにはあります。
特に、お金で困っている住み込みの子達にとっては、
お金を得る大きなチャンスです。
わんだはよく言います。
「こいびとがいないことはつらくないけど、
おかねがないことはつらい。」
笑ってしまったけれど、つらいことです。
彼は大学へ行くことを希望しているので、奨学金を狙うならば
学校の勉強もかなりできないといけません。
もし、行けなかったら、日本語を使って働くと言っていました。
大学生には及ばないけれど、ゆっくり話せばかなり伝わる男の子です。
大学に行ってほしい気持ちが大きいですが、
働くことも考え、知らない言葉をバンバンぶつけて一緒に勉強しました。
他の子たちも、レベルは様々ですが、挨拶や簡単なフレーズは
どんどん日本語でぶつけました。
いつか、恋人がいないことの方がつらくなる日が来るように。
スクールには、授業料回収の問題や、
授業カリキュラムの問題、クラス内レベル格差など
本当は改善すべき点がいくつかあります。
時間を理由にしてそのままになってしまったことが心残りです。
スクール以外にも、CJCCの絆フェスティバルへの参加や
自転車支援の贈呈式への参加、
新スクール開校までのお手伝い、
農村ホームステイなど、
少しずつではありますが、体験させていただきました。
一ヶ月間、多くの経験をさせていただけたこと、
CBBの皆様には本当に感謝しています。
私は今回、自分の勉強の幅を狭めたい、
今のうちに何かしたいという
なんとも勝手な思いでカンボジアへ来ました。
でも、そこで勇気を出して決めてよかった、という点では
自分としては満足です。
でも、スクールにとって、CBBの皆様にとってを考えると
全く満足いくことはできませんでした。
ボランティアや、人の為に何かすることは
ただ自分が感謝されたいからやることなんじゃないの?
と、批判的に言われることがよくありますが、
感謝されることは、人の為になっていることがよく分かるものだと思っています。
次にこのように現地に訪れるなら、
感謝するだけでなく、感謝されることをしたい。
大学でやりたいことも少し見えてきています。
海外を訪れることはこれで最後ではないような気がします。
きっとまた、スクールの子達に会いに行きます。
でもその時は、今より少しでも役に立つ人材になってから。
一ヶ月間、本当にありがとうございました。
大変短く、濃い期間でありました。
沼上順香